Home » 小論文4◆「生命のつながり」


公開日時:2009年03月06日 00時40分
更新日時:2009年03月06日 01時08分

【平成二十一年一月六日付】

生命のつながり
──フリッツ・スプリングマイヤー




一つの興味深い設問がある。一人の将軍が四つの師団を持っている。三つの師団には、それぞれに攻撃すべき地域が決められている。三師団は目的達成のため、それぞれ攻撃を開始する。四つ目の師団は補強要員として戦闘には参加させないでおく。


第一師団は上首尾に闘い、死傷者の数も少ない。
第二師団は戦闘の最中で一進一退の状況であるが、死傷者数はそれほど多くはない。
第三師団は困難に直面しており、極めて多くの死傷者を出しているが、それに見合う戦果を出せないでいる。
その将軍はどの師団に第四師団を投入して補強を計るであろうか。

さて、その答えだが、[私は平和主義者(パシフィスト)となる前、ウエスト・ポイント(米国陸軍士官学校)で戦争の技術に関する教育を受けた。だから、私は自らの答えが正しいことに自信がある。]

もし、ロシアの将軍であれば戦果をあげている師団、つまり、第一師団を補強するであろう。
アメリカの将軍であれば、うまくいっていない師団、つまり第三師団を補強救出に向わせる。
第二次世界大戦中、ドイツ国境のフェルトゲンの森(The Huertgen Forest)で、アメリカ軍は劣勢となった部隊への補強戦力の投入により、同軍のいくつかの最強の師団のうちの多くを、みすみす滅ぼしてしまった。

ロシア人とアメリカ人とでは、どうして、このように違った考え方をするのであろうか。
次のような説明をすれば答えの核心をつくと信じる。

私の説明の要点を示すための例として、まず、日本人とアメリカ人の考え方の違いを記してみようと思うが、さらに、その前に別の事を論じさせてほしい。

我々の行動(behaviours)は、我々の心構え(attitudes)の結果である。
心構えは信条(belief)の結果である。

これら、すべてを推進するエンジンは知覚された必要性である。四つ基本的な必要性がこのエンジンを動かしている。その基本的な必要性とは生命にとっての必要性、愛にとっての必要性、意味の重要性にとっての必要性、そして変化(variety)にとっての必要性である。

あなたが私の意見に同意しないとしても、まずは話を聞いてもらいたい。
各人は必要物を持っている。
そのことには誰でも同意できるだろう。
また人々の集団にも必要物がある。
国家にもそれがある。

ケルト人たちは個人に価値を置いた。
ニュー・イングランド地方(訳注・米国東北部六州)の原住民たちのイロコイ連合(Iroquois Confederation)もまた、個人と民主主義に価値を置いた。

こうしたことやその他のつながりから、アメリカ人たちは、一人一人の個人にとって最も良いことは集団の必要性にとっても最も役に立つという考え方を進展させた。

日本では、その反対の考え方が真実を保っている。
すなわち集団にとって最良のものは個人にとっても最良である。
だから日本人は個人の必要に応じるために集団の必要性に目を向けている。
アメリカ人たちは集団の必要に応じるために個人の必要性に目を向けている。

米軍のグリーン・ベレー部隊(奇襲部隊)は一人の個人を救出するために部隊の全兵士を危険にさらすであろう。
ロシア軍の奇襲部隊は自分たちの部隊のさらなる負担を省くために、負傷した個人を銃殺するだろう。

そこで、我々は自分たちの思考をどの程度拡大すべきなのか。
我々は主要な必要性が個人、家族、地域、国家、人種、地球、あるいは宇宙全体にあると考えるのか。
いかなる大きさの集団の必要性が最優先さるべき重要性を有するのか。
人々が、どこに第一の重要性を置くかに関しては完全な一致が見られないかもしれないが、すべてのものが互いに結びついているという事実は残るのだ。

かくして今、我々は自分たちのテーマ─結びつき─へと到達した。
一般に東アジアとヨーロッパは別々に発展したと考えられてきたし、現在もそう考えられている。
(けれども)多くの興味深い事実が現在も発見され続けている。

(電子、陽子などの)亜原子の微粒子レベルでは、量子物理学(quantum physics)の微粒子は、どんなに遠く離れていても結びつくことができる。こうしたことは、ちょうど「スター・トレック」において「ビーム・ミー・アップ」と言われた時と同じように、様々な物がテレポーテーションできるという理論上の科学的可能性を浮上させる。

最近、異なった大陸の間に様々な結びつきが存在したという事実が様々な発見によって明らかにされている。
「神々の指紋」ではピラミッドの設計に際してはπ(パイ)(3.1416......)の利用における特別の数学的類似性が示されている(この本には、もちろん他にも多くの興味深い考えが示されている)。

古代のピラミッド遺跡はエジプト、ヨーロッパ、アジア、中央及び北アメリカなどに存在する。さらに与那国島の近くで、一つのピラミッドが発見された。それは、すべてのピラミッドのうちで最古のものである可能性がある。

キリスト教の聖書は、他の古代の物語と同じく、古代において、高度に発達した科学技術を持つ、一つの政府の下に全世界が結びついていた、一つの時代が存在したと述べている。

最近オレゴン州で、1400年から1600年代の中国製の人工物が発見された。

1200年代から1300年代の間には、様々なキリスト教徒の集団がヨーロッパや中東から中国へ入国している。アラン人たち(Alani)、ネストリウス派、1250年頃のカトリックのフランシスコ派の使節たち。中国の kianasu には、1342年の日付けがはいった墓碑がある。

それはラテン語で記されており、おそらくは貿易に従事していたベニスの家系と関連があった。この当時から中国への通商ルートを記したヨーロッパ製の案内書が存在した。

ハヤシダ・ケンゾウは、1281年に日本の徳島湾で沈没した、モンゴルのフビライ・ハンの船を調査した。この船は極めて低い品質の材料で建造されていた。

読者の皆さんも御存知のように、モンゴルの日本及びヨーロッパへの侵略は打ち砕かれた。
最近、西欧の再生(ルネッサンス)は実は1434年にフィレンツェに到着した中国艦隊によって引き起こされたということを証明する資料(papertrail)を明らかにする、一冊の書物が出版された。

この時、中国人たちはヨーロッパのイルミナティのエリートたちに先進的な科学技術と正確な世界地図を与えた。レオナルド・ダ・ヴィンチのアイディアは中国のテクノロジーに基づくものなのだ! 

この本の題名は─「1434年=中国の大艦隊がイタリアを訪れ、ルネッサンスに点火した年」で著者はギャヴィン・メンジーズ(Gavin Menzies)である。(Harper Collins: 2008)

読者たちも、おそらく御承知のように、初期の明王朝(南京)では[中国語では靖何雪役と呼ばれる横 訳注:日本では靖何のへん]権力闘争があった。この際、燕王朱棣(えんおうしゅてい)は父親である太祖洪武帝から王国を奪った。

[訳注・靖何のへんは明朝第二代皇帝で高武帝の孫である、楯フミていがしょおう抑圧削減策を取ったのに対して、叔父の燕王が「君側の奸を除き、帝室の難を靖(やす)んず」と称して挙兵し、首都、南京を占領して帝位についた、明の王室の内乱。山川出版『小説 世界史』による。]


朱棣は1403~1424年の間、王位にあった。この皇帝[訳注:永楽帝]は鄭和提督を世界大遠征に送り出した。鄭和は外洋航海用の2020艘の艦隊を保有していた。それらの船は1281年のモンゴルの船よりも、ずっと上質なものであった。

鄭和提督はイタリアまで遠征した。彼は世界(全世界)地図をヨーロッパ人たちに譲り渡した。ローマ、フィレンツェ、ヴェネチアの支配層は多くの科学技術を獲得した。これらの中にはギア、伝動チェーン、ポンプ、印刷術、大砲、さらにはパラシュートなどが含まれていた。他にも多くの中国人の発明品があり、そうしたものは、この新しい本に記されている。

後に朱棣(永楽帝)の孫であり、1426~1435年の間、王位にあった宣徳帝は永楽帝の遠征政策を継続した。イスラム教徒の提督の鄭和は1434年には中国のヨーロッパ大使であった。彼の墓は北京の北にある。

ヨーロッパ人たちへの贈り物として送られた、中国人女性奴隷の子孫たちがアドリア海の島々で現在でも生存していると信じられている。

ダルマチア[訳注:ボスニア=ヘルツェゴビナ西部のクロアチアとの国境付近の地域]人のDNA研究は(これらの)島の人々をアジアと関連づけている。Hvar 島の人々は、かなり高い比率で東アジアのDNAを有していた。

2008年にワーナー・ブラザーズ映画社は鄭和提督の映画を製作した。(それが公開されているのかどうかは私にはわからない。)

琉球諸島の人々は鄭和の遠征に参加していた。それ故、現代の日本人の先祖の人々が鄭和とともにヨーロッパへ行き、1434年にその他に居たという可能性も存在する。

ヨーロッパ人たちは一世紀にわたり、中国製の世界地図を基にして作成した世界地図を秘かに使用した後で、この108年後に日本に到着した。

私は「1434年......」の本を推賞する。
読者の皆さんは、いかに私が物理学、作戦学、アドリア海の島々、与那国島の遺跡、そして明王朝とを関連づけたかおわかりになったであろう。

それらは「つながり」を実例で明らかにする。
しばし立ち止まり、生命の「つながり」について、じっくりと思いをめぐらして見ようではないか。
我らは、いずこにて始まり、いずこにて終わるのか。

(了)

  (週刊日本新聞編集部訳 平成二十一年二月九日)




【邦訳あり】
1421-中国が新大陸を発見した年 (単行本)
ギャヴィン メンジーズ (著), Gavin Menzies (原著), 松本 剛史 (翻訳)
単行本: 506ページ
出版社: ソニーマガジンズ (2003/12)


1421-中国が新大陸を発見した年 (ヴィレッジブックス) (文庫)
ギャヴィン メンジーズ (著), Gavin Menzies (原著), 松本 剛史 (翻訳)
文庫: 524ページ
出版社: ヴィレッジブックス (2007/12)


【邦訳なし】
1434: The Year a Magnificent Chinese Fleet Sailed to Italy and Ignited the Renaissance (Hardcover)
by Gavin Menzies (Author)
Hardcover: 384 pages
Publisher: William Morrow (June 3, 2008)

 


 

Home » 小論文4◆「生命のつながり」